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教育コラム

Vol.11

あなたのメールの敬語、大丈夫?

2014.12.05

ビジネスに欠かせないコミュニケーション・ツール、メール。
日頃、メールの中で何気なく使っている「敬語」。自信がありますか。
今回は、メールの中の「敬語」を振り返ってみたいと思います。

ビジネスメールの基本は、伝えたい内容を相手に正しく伝えることです。
そのためには、わかりやすいこと、そして失礼のない表現であることが必要です。
さらに、相手への思いやりや目上の方への尊敬の気持ちが伝わるものだとベストでしょう。
では、実際にはどうでしょうか。
あなたは、こんな表現を使ったことはありませんか?

◆「おうかがいさせていただきます」?

まず、敬語には、以下の3種類があります。

尊敬語:相手を敬う(立てる)言葉
謙譲語:自分がへりくだることで相手を敬う(立てる)言葉
丁寧語:言葉そのものを丁寧にすることで相手に敬意を表す言葉

どれも相手への敬意を表現するものですが、それぞれ使い方が違います。
「敬語ってなんだか難しくて…」と思われている方も、この3点に注目して考えてみるとより理解を深めやすくなるはずです。
まず“典型的な間違い敬語”のひとつとして有名なのが、この「おうかがいさせていただきます」です。
よく使うよ、という方もいらっしゃることでしょう。
さて、これを上記の「3種類」に分解してみると、実はこんな感じになります。

お(尊敬語)うかがい(謙譲語)させていただく(謙譲語)ます(丁寧語)

どこがおかしいのでしょうか?よくご覧いただくと「丁寧語」の前に「尊敬語」が1つ、そして「謙譲語」は2つ重なっています。
敬意を表したいことはわかるのですが、実は用法の違う言葉が混在したややこしい表現になっているのです。
これをスッキリさせると

「うかがいます」あるいは「おじゃまします」

となり、「謙譲語」を重ねて使うこともなくなります。
他にもこのような混乱した言い回しをしている敬語は多くあります。
例えば「拝見させていただきます」は、「拝見します」で良いのです。
普段、当たり前のように使っている言葉も改めて見てみると、新たな気づきがあるものです。

◆あるある!「二重敬語」と「勘違いしやすい表現」

次にご紹介するのも(こんな風に書いてしまったことがあるかも…)という例です。
誤った敬語の使い方のナンバーワン。それは「二重敬語」です。
前述の「おうかがいさせて~」も二重敬語(実際には三重敬語ですが)になりますが、他の二重敬語には、どんなものがあるのでしょうか。

×「役職」+「様」 例)社長様、関係者各位様

社長や部長といった「役職」、各位という複数の人を指す「敬称」には、そのままで敬意が込められている表現です。ここに「様」をつけてしまうと、二重に敬語を使うことになりますので、ご注意ください。

×「尊敬語(お~なる)」+「~られる」 例)お客様はお帰りになられました

「~れる」は尊敬語で、正しくは「もうこの本を読まれましたか?」のように使います。
しかし、多くの方は「お読みになりましたか?」あるいは「ご覧になりましたか?」に置き換えてお使いになることが多いと思います。
この「お読みになる」を「お読みになられる」、「ご覧になる」を「ご覧になられる」と使ってしまうと、これも二重敬語になってしまうのです。
上記の例でいえば、「お客様はお帰りになりました」もしくは「お客様は帰られました」が正しい表現になります。

◆「~させていただく」

「おうかがい~」でも触れましたが、「~させていただく」という表現は「とりあえずこの表現をつけておけば敬語っぽくきこえる」便利な言葉ではあります。
しかし近年この表現が問題になっています。
〇 必要以上に多用されやすい。
〇 二重敬語のように聞こえる。(二重敬語ではありません)
〇 まどろっこしい表現に見える。
そして、その他にもこの敬語の元の意味に理由があるようです。

文法や用法を細かく調べてみると「させていただく」は、「相手がしてほしいと望んでいる。だから、自分がしてあげよう」という意味があります。
つまり、いわゆる“上から目線”の表現なのです。
ですから、できれば
「尊敬語あるいは謙譲語 + ~(いた)します」
とし、例えば「お供させていただく」よりは「お供します」、「聞かせていただく」よりは「拝聴します」と言い切ってしまったほうがスッキリして美しいのです。

◆これは正しい言い回しです。

一方、間違っているようで、実は正しい表現もあります。
たとえば「ご自愛ください」です。
これは、相手の体調をいたわる言葉ですが、目上の方には使ってはいけないといわれていたこともあります。しかし、「自愛」には尊敬の感情も込められています。ですので、目上の方に使っても失礼ではないそうです。

そして、話題に上ることの多い「了解しました」「承知しました」についてもお話しておきましょう。
「了解」は目上の方に使ってはいけない。「承知しました」「承りました」を使うべきと聞いたことのある方もいらっしゃると思います。これについては、文法上はどちらも大丈夫だという説もあります。しかしながら、まだ一般に定着している用法とは言えませんので、目上の方には「承知しました」「承りました」を使われた方が、現時点では無難でしょう。

◆コミュニケーションの基本は、話すことです。

ここまで、メールでよく使ってしまいがちな表現を中心にいくつかご紹介しました。
ここでひとつ心に留めておいていただきたいことがあります。
メールは便利で手軽で、すぐに伝えられることもあり、何かと頼ってしまいがちですが、あくまでコミュニケーション・ツールの1つの手段でしかないということです。
ビジネスにおいて『コミュニケーションの基本』は、相手と話すことです。
どんなにメールに詳細に書いたとしても、伝わり方は受け手によってさまざまです。
相手に正しい情報を伝え、円滑に物事を進め、良い関係を築くためにも、メールに頼りすぎないことが大切です。
電話で声を聞いて話す、直接会って話すなど、必ず「人と人との心が通うコミュニケーション」を関わりの中心に置くようにすると、コミュニケーションの質は大きく向上します。

そして、「相手と向き合うこと」を大事にしていく気持ちが、自然とメールでの言葉遣いにも表れていくと思います。
このコラムを読んで(もしかしたら変な敬語の使い方をしていたのかも?)と不安に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、敬語は間違えたからといって取り返しがつかないわけではありません。その都度、気づいた時に、正しい表現を学習していくことで、より磨かれていくのです。
今回、ご紹介した言い回し以外にも『間違った使い方』『間違っているようで、実は正しい使い方』が敬語には数多くあります。この機会に、辞書を引いてみたり、ネットで検索してみたりなど、気になる表現を調べてみてはいかがでしょうか。
知識の幅を広げるだけでなく、それを周囲に失礼のない正しい言葉で伝えるという大人の教養も同時に身につけたいものです。

ライター(教育) 石井悦子

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