健康コラム

Vol.21

患者それぞれの個室の理由

2016.03.01

みなさんは入院するなら個室を選びますか?それとも大部屋を選びますか?
筆者は人と接することが好きなので大部屋を選びます。ただ、心身面で人と接するゆとりがない状況だったり、面会人に小さな子どもがいたりする場合は個室を希望するかもしれません。もちろん費用面から検討するということもあるでしょう。
今回は、元ナースの立場、現役FPの立場から、「病室」をテーマにお伝えします。


■病室はどのように決まるの?
入院が決まったら、まず入退院センター(患者支援センター、ベッドコントロールセンターなど名称は色々)で、入院の手続きや準備品、費用など、入院に関する諸々の説明が行われます。ここで、病室の希望も確認されますので、個室か大部屋かの希望を伝えます。
入退院センターは、ベッドコントロール(病院において入院患者のベッドを効果的・効率的に稼働させるための管理・調整)を行いつつ、入院生活についての情報を提供し、患者の問題を早期に把握し、患者や家族の不安を和らげる役割を持つのです。
そして、ベッドコントロールの最終責任者は病棟師長。夜間の緊急入院の場合は、当直師長が患者の希望を確認しつつベッドコントロールします。

■個室は高い?
通常、公的保険のもとでは、病院のベッドの使用料金を含む入院費用は3割負担です。高額になった場合でも、高額療養費制度により一定額を超えた分が払い戻される仕組みになっています。
しかし、ベッドの使用料金が公的保険で定められている料金より高額で、その差額を患者から徴収することが認められているもの(差額ベッド代)は、公的保険対象外のため、全額自己負担となります。
差額ベッドとは、正式には「特別療養環境室」といい、その名の通り、療養環境に特別配慮された部屋のこと。差額ベッド代が発生するのは1〜4人部屋で、個室や2人部屋は基本的に発生します。6人以上の大部屋では発生しません。

1日あたり平均徴収額

この差額ベッド代が入院費用を上下させるのですが、なかには差額ベッド代がかからないケースもあります。それは、「治療上の必要」がある場合と、「病院側の都合」による場合です。

「病院側の都合」の代表例は、大部屋に空きがない場合です。そして、「治療上の必要」というのは、大きく分けると以下の3つの場合です。

@感染症の場合
感染を防ぐために個室隔離しなくてはいけない。
A重症で常時注意が必要な場合
モニターやチューブなど多くの医療機器が身体に付いているため、ベッド周囲のスペースを取る。さらに、医療スタッフが頻繁に訪室する必要がある。
Bターミナル(終末期)の場合
家族や他の患者への配慮から。死後の処置などの理由もある。

たとえば、自分や他の患者のいびきがうるさいから個室を希望するという場合は、「患者側の都合」なので差額ベッド代はかかります。

なお、いずれの場合も、差額ベッド代が必要となる個室に入院する場合は、同意書にサインする必要があります。たとえ患者側の都合であっても、同意書による同意を得ていない場合は、差額ベッド代を患者に請求することはできません。

■大部屋のメリットとデメリットは?
必ずしも「良い環境イコール個室」というわけではありません。
場合によっては、大部屋の方が良い環境かもしれません。冒頭でも述べたように、筆者は大部屋が好きです。

大部屋のメリットは、何と言っても、他の患者と情報交換や交流がしやすい点でしょう。診療科が同じだと、同じ病気の患者が多いです。
患者どうし、家族どうし、情報を共有し合い、励まし合うこともできます。たとえば、食事療法が必要な病気(糖尿病や腎臓病など)で入院している患者の家族どうしで食事のレシピを交換し合うことも。

一方、大部屋のデメリットは、やはり、プライバシーが保たれにくいという点でしょうか。各ベッドがカーテン1枚で仕切られており、会話や物音が気になることも。
面会人が多い場合や、面会人の中に子どもがいる場合などはお互い気を遣いますね。

■個室のメリットとデメリットは?
個室のメリットは、大部屋のデメリットの裏返しで、プライバシーが保たれやすいという点です。面会人ともゆっくり話ができますね。

一方、個室のデメリットは、これもまた大部屋のメリットの裏返しになりますが、ほかの患者と情報交換や交流がしにくいという点です。あとは、費用の問題でしょう。

ところで、個室には一般個室と特別個室とがあります。筆者が勤務したことのある、大学病院の例をあげてご紹介します。

一般個室は1日あたり約2万円。
室内設備は、シャワー、洗面台、トイレ、ロッカー、冷蔵庫付き床頭台、テレビなど。

最もグレードの高い特別個室は、1日あたり約20万円。
室内設備は、テレビ3台、DVDデッキ、簡易キッチン、冷蔵庫、電子レンジ、バス、シャワー、洗面所、トイレ2室、ウォークインクローゼット、応接セット、ソファー、ドレッサーなど。ベッドルームのほかに、会議室や談話室、受付などもあります。
ちなみに、ここに配属されるナースは、接遇マナーに長けた選ばれしナースです。

いろいろと書いてきましたが、大切なのは、その入院環境が「治る力を引き出す環境かどうか」です。
入院の際には、入退院センターで入院生活や費用面のことなどを相談してみてください。みなさんそれぞれに合った環境選びができますように。

ファイナンシャルプランナー 萩原 有紀