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知れば納得!医療情報

腰部椎間板ヘルニア

監修:慶友整形外科病院 副院長
平林 洌

2001年度、厚生労働省が実施した「国民生活基礎調査」の症状別有訴者率によると、1位「腰痛」、2位「肩こり」、3位「手足の関節痛」と、骨・筋・関節などの症状が上位を占めています。このことからも分かるように、皆さんの中にも一度は腰痛を経験した方が多いのではないでしょうか。腰痛の原因・疾患は様々なものがありますが、そのほとんどは腰椎の変化から起きるものです。今回はその中でも代表的な腰部椎間板ヘルニアについてお話ししたいと思います。

どんな病気か?

背骨は椎骨が縦に重なって形成されています。その椎骨と椎骨の間に挟まれているのが椎間板で、腰椎は5つの椎骨と5つの椎間板で形成されています。腰椎は背骨の中で最も大きく動き、上半身の体重を支えています。椎間板の機能は、可動作用、緩衝作用、脊椎の安定・支持です。椎間板の中心にはゼリー状の髄核があり、その周囲を繊維輪という組織で囲んでいます。加齢により繊維輪の弾力が低下したところに、無理な力や大きな力が加わったり、繊維輪が破れ、中心部にある髄核が飛び出してしまった状態が椎間板ヘルニアで、腰椎で起きたものを腰部椎間板ヘルニアといいます。現在、MRIの普及により、飛び出した髄核も自然に吸収されることのあることが分かってきました。髄核が飛び出した周囲は炎症が強く、白血球中のマクロファージの働きが活発になります。マクロファージは異物を食べる働きがあり、ヘルニアを異物とみなし食べて吸収してしまうと考えられています。たとえ吸収はされなくても、多くの腰部椎間板ヘルニアは保存療法で回復すると言われています。

症状

急性の激しい腰・殿部〜下肢痛、下肢に響くような痛みや痺れ、下肢の筋力低下、排尿・排便機能の異常など。

検査

神経学的診察(下肢腱反射、知覚検査、下肢筋力テスト)及び、MRI検査などにより診断されます。

治療

[保存療法]

(1)安静:痛みの強い急性期には、椎間板に負担をかけないよう楽な姿勢(臥位、特に側臥位)での安静を心がけます。
(2)薬物療法:消炎鎮痛剤や非ステロイド性抗炎症薬、筋弛緩薬を内服したり、湿布として使用します。
(3)ブロック療法:急性期の激しい疼痛には硬膜外ブロックや神経根ブロックも有効です。
(4)理学療法:慢性期の痛みに対しては、主に温熱療法や牽引療法などで軽減を図ります。
(5)コルセット:腰部の支持を補強し、腰への負担を軽減させます。

[手術療法]
下肢の筋力低下や痺れなどの神経症状が強く見られる時や、腰・殿部〜下肢痛が強いために、日常生活に支障をきたすような場合には手術が必要になります。

(1)後方椎間板切除術:背中側を切開して、飛び出したヘルニアを摘出し、神経根への圧迫を取り除く手術法で、現在も最も多く行われている方法。(内視鏡下や顕微鏡下で行うこともあります。)
(2)椎体固定術:椎間に大きな不安定性が危惧される場合や、再手術が必要な時に、椎間板を完全に摘出した後に腸骨片を椎体間に移植する方法。
(3)経皮的髄核摘出術:椎間板に管を差し込んで髄核を吸引する方法。
(4)経皮的レーザー治療:椎間板に針を刺し、針先からレーザーを照射して髄核を蒸散させる方法。

腰痛を防ぐために

腰痛の予防には、日常生活における自己管理が非常に重要です。工夫次第で腰痛発作の頻度や、痛みの程度が大きく変わります。

<腰痛予防のポイント>第一に腰に負担をかけないことです。

(1)良い姿勢を保ち、正しい座り方を心がける。
*背中から上は背筋を伸ばし、体はいくらか前かがみにして、腰をそらし過ぎないようにする。椅子に座る場合、座面は低めにして、やや浅めに座る。
(2)ものの持ち方(持ち上げ方)を工夫する。
*膝を折って、ものに十分近づき、おなかに力を入れて、膝の伸ばす力を利用して持ち上げます。腹圧を高めることで、背骨の支える力がアップします。
(3)楽な姿勢で寝る。
*寝具が柔らか過ぎると、お尻が沈み、そり気味の姿勢になります。固めの寝具に変えてみましょう。また、膝の下に枕を入れた状態や、横向きで腰を曲げて丸くなった姿勢は最も楽な姿勢と言われています。

<運動療法のポイント>背骨のサポーターである腹筋、背筋を鍛えることです。

(1)腹筋強化:膝を立てて仰向けになり、手を首筋の下に組んでお臍を覗き込むように上半身を起こします。
(2)背筋強化:腹ばいになり、手を首筋の下に組んでゆっくり上半身を起こします。この時足が上がらないように注意します。
*水泳は、椎間板にかかる負担が少なく、最も安全で、効率の良い腹背筋の鍛錬方法と言われています。

但し、痛みが強い急性期には行ってはいけません。また、無理して行うと腰痛を返って誘発してしまうこともあります。ゆっくりと、何よりも長く続けることを心がけましょう。

終わりに

腰部椎間板ヘルニアの治療は、保存療法が中心となりますが、その効果は患者さんによって異なります。腰・殿部〜下肢の痛みや痺れなどの症状があるときは、まず整形外科を受診しましょう。

◇   ◇   ◇

<参考文献>
標準整形外科学        医学書院
腰痛の正しい治し方      講談社
腰痛、肩こり、手足のしびれ  NHK出版

原稿・社会保険研究所©
※2005年作成
※内容は執筆当時のものであり、現在も同様のものであるとは限りません。

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